両刃
主に洋庖丁に見られる構造で、三徳庖丁や牛刀、ペティ―ナイフなど、あらゆる用途に適したバランス型の庖丁が多いです。
和庖丁でも寿司切り庖丁や、南部の一部の地域で使用される出刃庖丁などにも両刃のものが存在します。
特殊な例として、庖丁の形状は片刃で、刃先のみ両刃(裏も角度を付けて研ぐ)という庖丁もあります。
全鋼
単一鋼材で作った庖丁で、一般的にはステンレス製のものを指す場合が多いです。
全鋼の庖丁では、使い手が好みに応じて裏の角度を調節し、片刃に近い形状に研ぎ上げることで、より鋭利な刃に仕上げることが可能です。
応用の幅が利きやすい構造だと言えるでしょう。
三枚合わせ(三層鋼)
サンドウィッチのように鋼が軟鉄で挟まれており、鋼が峰まで入っているのが特徴です。
全鋼と違い、鋼が中心部にあるため、基本的には1:1の両刃に研ぎ上げる必要があります。
極端に片方だけ多く研いでしまうと、図のように軟鉄部分が刃先になってしまい切れなくなる原因となるので注意しましょう。
割り込み
地金の中に鋼が包まれるように入っているのが特徴です。
三枚合わせと同じように1:1で研ぐのが基本です。
最近では利器材が普及してきたため、鍛接による割り込み庖丁も減少傾向にあります。
鋼材メーカーの工場で予め鋼と地金とを接合した鋼材のことを指します。
鋼と地金を合わせる「鍛接」という工程を省いて、火造りから作り始めることができるので、製造効率が上がり、コストダウンにも繋がります。
非常に扱いやすいため、現在では多くの作り手が使用しています。
片刃
柳刃、出刃、薄刃などが代表的で、それぞれの用途に特化している庖丁が多いです。
片刃の庖丁は、特に日本料理と密接に繋がっており、古くより和食の料理人に愛されてきた庖丁です。
片刃は図のように、断面から見ると裏面が殆ど平面で、ほんの僅かに窪んでいるのが分かると思います。
刃は表面から裏面にかけて斜めに付いているので、食材から受ける抵抗が不均等になり、右刃であれば左に流れるように刃が入っていきます。
二枚合わせ
鋼に軟鉄を張り合わせて作った庖丁です。
鋼の部分は光沢があるのに対して、軟鉄の部分は霞んだように仕上げるため「霞(かすみ)」とも呼ばれます。
硬い鋼に軟鉄を張り合わせることで、軟鉄が衝撃吸収の役割を果たしてくれるので、耐衝撃性に優れた構造になっています。
また、切刃も軟鉄が占める割合が多く、研ぎ易いのがメリットです。
デメリットは異なる二種類の鋼材を合わせるため、経年変化で庖丁が歪みやすい点です。
本焼き
単一鋼材で作った庖丁で、主に鋼製のものを指す場合が多いです。
全体が硬い鋼一枚で出来ているため、全体に焼きが入ってしまうと後の工程での歪み取りができなくなってしまいます。
そのため、焼き入れ前に土置きをすることで、鋼の冷えるスピードをコントロールし、峰側には焼きが入らないように作られます。
庖丁の中央部分から峰にかけて泥を塗る作業のこと。
泥を塗ることで、金属が冷えるスピードを遅くし、焼きが入らないように調節する技術です。
この泥は主に砥糞、天砥石の粉末、炭粉などから出来ており、配合は各鍛冶屋の中でも極秘とされています。
焼き入れ後には、鎬付近に白く光る波状の模様が浮か上がります。
これを「刃文」と呼び、庖丁の柔らかい部分と硬い部分のちょうど境目になります。
本焼きを作るには非常に高度な技術を要するため、現在では作れる職人も数えるほどしかおらず、希少な庖丁になりつつあります。
一枚で出来ているため合わせと比べて研ぎにくい傾向にありますが、経年変化による歪みが出にくいため僅かな調節で長い間使用できます。
金属を一定の温度帯まで加熱し、一気に冷やす工程のこと。
熱された金属が急冷されることで刃物としての硬さが得られます。
庖丁に命を吹き込む作業で、職人の技術が問われる工程だと言えるでしょう。
今回は両刃と片刃の構造について紹介いたしました。
構造を理解した上で、それぞれの特徴を生かして使用していただければ庖丁本来の持ち味を引き出せるはずです。
また、研ぎで悩んでいる方は庖丁の構造を正しく理解していない場合が多いので再度お持ちの庖丁を確認してみましょう。
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