ダマスカス鋼とは?
ダマスカス鋼Damascus steel)とは、木目状の模様を特徴とする鋼であり、古代インドで開発されたるつぼ鋼であるウーツ鋼の別称である。ダマスカス鋼の名は、シリアのダマスカスで製造されていた刀剣などの製品にウーツ鋼が用いられていたことに由来する。現在は異種の金属を積層鍛造して模様を浮かび上がらせた鋼材もダマスカス鋼と呼ばれているが、本来のダマスカス鋼の模様はるつぼによる製鋼における内部結晶作用に起因するものである。
wikipediaより
現在は主に庖丁の表面に浮かび上がるデザインを指します。
ダマスカス紋様は異なる2種類以上の鋼材を層状に重ねた材質に特殊加工を施すことで独特な紋様を浮かび上がらせています。
そのデザインの美しさから非常に人気の庖丁で、ここ数年では特に海外のお客様から厚い支持を得ています。
皆さんに気を付けていただきたいのが、基本的な構造は普通の3枚合わせの庖丁と同じなので、刃となる芯材が同じであれば庖丁自体の性能に差はないという点です。
おすすめの庖丁を紹介する一部のブログではあたかもダマスカスの方がよく切れるかのような説明がされている場合がありますが、基本的にはデザインの違いのみになります。
”層の数によって性能に差は出るのか”という質問をされることが多いのですが、35層であろうと101層であろうと芯材が同じであれば性能は変わりません。
コアレスダマスカス
こちらは一般的なダマスカスと異なり刃となる鋼材を2種類以上(V金2号&5号のように)重ね合わせて1枚の金属板を作り、庖丁の形に加工したものを指します。
名前の通りコア(核=芯材)レス(無い)、つまり芯材がない庖丁という意味で、基本的には本焼きと同じような構造ですが、1枚の金属に異なる鋼材が層を成しているという点で異なります。
コアレスダマスカスの特徴としては、刃先に異なる鋼材が交互に現れることで、普通の庖丁では味わえない切れ味になります。
色々な研究結果を目にしますが、今のところ詳細に説明した論文を目にしたことがないので、実用的にどれほどの差があるのかは明確ではありません。
コアレスダマスカスは通常のダマスカス庖丁と非常に似ているため、一般の人は見分けが付かないことが多いです。
区別するポイントとしては、コアレスダマスカスは紋様が庖丁全体に浮かび上がっているのに対し、通常のダマスカス庖丁は刃先5~8mmくらいには紋様が全くありません。
特徴
メリット
何といっても見た目のカッコよさがダマスカス庖丁が人気である所以でしょう。
一つとして同じ紋様は存在しないので自分だけの一丁という特別感があります。また、気に入ったデザインの庖丁は使うだけで普段の料理が楽しくなりますし、仕事であればモチベーションの向上にも繋がります。
特にカウンター仕事の場合は客席から手元が見えるため、パフォーマンスの一環として見た目にもこだわりをもってデザイン性の高いダマスカス庖丁を購入する料理人も多いです。
また個人的な意見ですが、紋様がある分、傷がつかないようにより一層大切に扱う方が多いと感じます。
丁寧にお手入れをすればその分綺麗な状態で長く使うことができるので、相棒との思い出も増えることでしょう。
デメリット
紋様を浮かび上がらせるために工程がいくつか増えることで、より製作に手間がかかるため値段がやや高くなる傾向にあります。
性能の面だけで見れば無地の庖丁と差はないので、実用性を求める方にとってはコストパフォーマンスはあまり良くないと思います。
また、使用している間に擦り傷がついたり、砥石で側面を傷つけてしまったりした場合には非常に目立ちやすいので、細かい部分が気になる方は逆に使いづらく感じるかもしれません。
魅力とは?
確かに実用性においては無地の庖丁と差はありませんが、庖丁をただの道具から見た目でも楽しめる道具にステージをあげたのがダマスカス庖丁だと思っています。
器が使うためのものであり、その美しさを目で楽しむためのものでもあるように、庖丁もまた違った楽しみ方があってもいいと考えています。
紋様の特徴や浮かび上がらせる工程も作り手によって様々で、知れば知るほど非常に奥の深い世界だということがわかってきます。
ダマスカス紋様に限らず、実用性は最低限兼ね備えた上で見た目や庖丁そのものの形にもこだわることで、異なる価値を生み出すことができるのではないかと思います。
変化の激しい現代において伝統工芸の本質は守りつつも、新しい挑戦をしていく職人さんが増えてくるとまた違った角度からより多くの方に興味を持ってもらえるのではないかと思います。
出来る限り多くの方に庖丁の魅力を知ってもらい、業界全体が良い方向に進んでいくように自分のできることを積み重ねていきたいと思います。
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