最近知り合いから”庖丁屋ってどんな仕事するの?”と聞かれることが多く、興味を持ってくれる人がいることに嬉しく思いつつ、実際にどのような仕事をしているかあまり知られていないのだと実感しています。
そこで今回は庖丁専門店に勤めている僕自身の経験を元に普段の仕事内容をご紹介していこうと思います。
あくまでも僕自身が経験してきた内容を元に紹介するので、庖丁専門店で働く全ての方に当てはまるとは限りません。是非参考までに留めていただけると有り難いです。
主な仕事内容
接客
僕自身がお世話になっている『つば屋庖丁店』では主に接客が中心の仕事となります。
一般のお客様からプロの料理人まで幅広い層の方々が各々の目的に合った庖丁を探しに全国各地からいらっしゃいます。
僕達は庖丁を扱うプロとして、各種庖丁の種類・用途・特徴、庖丁に使用されている材質の特徴やメンテナンスの仕方まで様々な疑問に可能な限りお答えし、お気に入りの庖丁を探すお手伝いをさせていただいております。
中には数十年前から通っていただいている常連さんも多く、一本の庖丁を2、30年大切に使用してくださっている方もよく見かけます。
また、現在は世界各国から庖丁を求めて来店する方も非常に多く、有り難いことに毎日忙しくさせていただいております。
幸いなことに僕自身は中国語と英語を話すことができるため、これらを活かしてより多くの方とコミュニケーションとり、遠方から来店されたお客様に満足して帰っていただけるよう一人一人のお客様に真摯に向き合っています。
研ぎ直し・修理
つば屋庖丁店ではアフタメンテナンスを大切にしております。
主に切れなくなった庖丁の研ぎ直し、欠けの修理、柄の交換などメンテナンスの内容は多岐に渡ります。
僕はバイトとして勤務し始めた頃から興味があり、入って一週間も経たないうちから研ぎ直しや柄交換の練習をさせていただいていました。
スタッフ全員ができる仕事ではありませんが、手先が器用な方や挑戦したいスタッフには練習の時間を設けて指導しています。
まずは一般家庭用の万能庖丁で比較的状態の良いものなどから研ぎ始め、上達してきたら形を大きく直す必要のある庖丁や片刃の庖丁など難易度が高い庖丁の研ぎ直しも担当するようになっていきます。
家庭用の万能包丁から、プロの方が使用する庖丁まで責任を持ってアフターメンテナンスをさせていただいております。
メール対応・商品発送
各商品に関するお問い合わせやその他お客様のご相談に対応する業務も非常に重要です。
現在は担当のスタッフがおり、できる限りお客様の疑問を解決できるように誠意を持って対応しております。
また同時にオンラインショップも運営しておりますので、お客様よりご注文を頂いた後、担当スタッフが商品を検品し、梱包、発送といった一連の業務を行います。
単純な作業ですが、その分ミスも起こりやすく、発送する商品の種類を間違えたり、発送先を誤ったりすることも少なくありません。
現在は新たに加わったスタッフが様々な面で業務のシステム化に努めており、ミスを限りなく減らし、正確に効率よく作業ができるようになってきています。
在庫管理・発注
つば屋庖丁店では少なくとも1000種類を超える庖丁を扱っているため、日々の在庫管理が非常に大切になります。
最初から在庫管理を任されることはありませんが、少しづつ在庫の場所や発注先などを覚えていきます。
僕が入りたての頃はまず店舗一回の販売スペースにある在庫の場所を出来るだけ早く覚え、お客様が商品を購入する際にすぐにご用意ができるように努力しました。
同時に毎朝店舗在庫を確認し、前日に売れた分の在庫を倉庫から補填します。この作業を毎日行うことで、倉庫にある在庫の位置と店舗在庫の位置が把握でき、様々な業務がよりスムーズに行えるようになりました。
在庫の位置と種類が把握できてきたら、徐々にその商品と仕入れ業者を結びつけていく段階に入ります。
最終的には店舗在庫の位置の把握→在庫の補填→倉庫在庫の位置と数量の確認→不足商品の発注、と一連の業務を行えるようになります。
学べる事
庖丁について
これは言うまでもないですが、庖丁について様々な知識を学ぶことができます。
基礎的な内容からより深い内容までスタッフによって多少のばらつきはありますが、庖丁を専門に扱う仕事に必要な内容は間違いなく学ぶことができるので、初心者の方も安心して働ける職場だと思います。
また日々様々なお客様に接客していく中でお客さまから学ぶことも多く、特にプロの料理人がどのように庖丁を扱っているのか、中には独特な使い方をする方もいるので非常に勉強になります。
勤務時間内で学べることも多いですが、更に多くのことを学びたいという方は書籍を購入して勉強をしたり、実際に庖丁と砥石を購入して自宅で使用してみることが一番でしょう。
また興味があれば作り手さんを訪ね、色々とお話を伺うことで彼らの仕事に対する考えや庖丁についてのより深い知識を学ぶことも可能です。
言語
2023年現在、コロナがようやく終息し合羽橋も多くの海外観光客で賑わっています。
割合で言えば日本のお客様よりも海外のお客様の方が多くなってきているため、勤務時間の半分以上は英語で会話をしていると言っても過言ではないでしょう。
僕の場合は当初から中国語と英語ができたのである程度の会話は可能でしたが、専門用語が必要となると説明が難しくなり、最初は上手く対応ができませんでした。
しかし、毎日のように外国語を通して接客をすることで少しづつ上達していき、現在では比較的難しい内容でもお客様に納得していただけるような会話はできるようになりました。
日々外国語を使用する環境に身を置くことで、上達スピードは格段に早くなりますし、頻繁に話すことでふと気がついた頃には自然と身についていることが多いです。
元々外国語を話すことができる人はその能力を発揮できる職場だと思いますし、あまり話せない人であっても色々な国の人と関わる仕事がしたいと思っている人であれば、環境は全て整っているので自分の努力次第でいくらでも上達できる職場だと思っています。
手仕事
売り手として庖丁についての知識や言語を学ぶ事を中心として、もう一歩深く庖丁業界に足を踏み込みたい人は職人の手仕事の一端に触れてみることも大切です。
身近な部分で言えば庖丁の研ぎ直しや柄の交換などの作業にあたります。
つば屋庖丁店では全員のスタッフがこういった手仕事に従事しているわけではありませんが、中でも手先が器用な人や興味のある人が積極的に覚えていく形になっています。
知識も必要ですが、それを実際に作業に落とし込み体で覚えることで、より庖丁に対する理解が深まると確信しています。
僕の場合は非常に特殊な例ですが、少しでも職人さんの手仕事を理解したいと思い、自身で庖丁作りをしたり、一から商品開発に携わったり等色々なことを経験するように意識しています。
やりがい
やはり一番のやりがいは自分の接客したお客様が喜んでくださることです。
直近で言えばコロナ前に来店したことのある海外のお客様が3年越しに庖丁を買いに戻って来てくれて、”庖丁すごく良かったからまた買いに来たよ!”と声をかけてくれたことがとても嬉しかったです。
わざわざ遠い国から日本に旅行に来て、その上で庖丁を買いに合羽橋に来てくれることを想像すると本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
また自分の研ぎ直した庖丁を使用して、”すごく使いやすくなった!”、”新品みたいに綺麗になった!”と喜んでいただけた時もやりがいを感じます。
お客様から直接感想をいただくことで非常に勉強になりますし、自分の仕事を信頼してくださる料理人の期待に応えられるように上手くなりたいと日々意識しています。
プレッシャーを感じることも多いですが、その分満足いただけた時には達成感があります。
他にも職人さんと関わる中で色々な経験ができることも非常に楽しいですし、一つのことを突き詰めていく面白さは4年経った今でも毎日のように感じています。
突き詰めていく程に今まで見えなかった世界が見えるようになり、永遠に終わりのない世界だと感じると同時に、自分がどこまで進めるのか楽しみでもあります。
やりがいの感じ方は人それぞれですし、最初は仕事に対して特にやりがいを感じることがなくても、一生懸命に働く中で少しずつ見つけていけばいいと思います。
まとめ
つば屋庖丁店では定期的にご飯会を催し、普段職場では中々話せないことや、各々思うことについて意見交換したりします。
職人さんや取引先の方ともご飯に行くことが多く、いつも和気藹々とした雰囲気でみんな楽しんでいます。
それぞれに個性があり、自分の強みを活かして仕事に真摯に向き合っています。
時には厳しく指導することもありますが、基本的には楽しく笑顔で日々の業務に取り組めるような雰囲気作りを意識しています。
僕自身もまだまだ学ぶ事が多く、時には同僚に迷惑をかけてしまうこともありますが、素晴らしい仲間にサポートしてもらいここまで来ることができました。
これからは今まで以上に全力で仕事に向き合い、つば屋での業務はもちろんのこと、自分自身の事業にも力を注いでいこうと思っております。
そして、新たな挑戦をするためにはスタッフのサポートは必ず必要になってきます。
現在、つば屋庖丁店では業務拡大に伴い新たにチームに加わってくれる仲間を探しています。
興味のある方は是非以下の募集ページを参考にしてお問い合わせいていただければと思います。
個人的に僕のインスタグラムからご相談いただいても構いませんので、少しでも興味のあるからはお声がけいただければと思います。
少し話がそれましたが、今回ご紹介させていただいた内容が庖丁屋の主なお仕事となります。
他にも紹介しきれない事が沢山ありますが、もっと詳しく知りたいという方は是非チームの一員になって一緒に働きましょう。
スタッフ一同心よりお待ちしております。
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