研ぎを知る

研ぎに関する素朴な疑問10選

Q.1-5

Q.1 ステンレス製の庖丁は研げる?

はい、研げます。

ステンレス合金鋼の庖丁はハガネ(炭素鋼)の庖丁と比べて刃がつきにくい傾向にあるため研げないと勘違いしてしまうお客様も非常に多いです。

特に昔からハガネを使っているお客様からはステンレスは硬くて削れないという声が多く、ハガネと同じ切れ味を出せずに苦労していることがわかります。

確かにステンレスの場合は砥石への食い付きがハガネほど良くないため、人によっては砥石の表面をツルツル滑ってしまうような感覚を覚えるかもしれません。専門的な解説は避けますが、これは組織の構造の違いによるもので研ぐ方の技量によるものではありません。

ハガネよりもやや難易度が高くなるため、コツを掴むまでは練習が必要になるでしょう。

何度チャレンジしても上手く研げない場合は庖丁を購入された店舗へ持っていって研ぎ直しをお願いするか、研ぎ方の簡単なレクチャーをしてもらいましょう。

Q.2 簡易研ぎ器は使える?

基本的に両刃であれば使用できますが、おすすめはしません。

確かに簡単に刃は付きますが、急場しのぎの切れ味にしかならないので結局は調理前に毎回使用するようになります。庖丁が比較的新しく刃先が薄い状態であれば辛うじて刃は付きますが、使い続けるうちに刃先のみが極端に削られ鈍角になっていくためいずれは簡易研ぎ器でも研げなくなります。

また、家庭用の庖丁に向けて開発された商品ですので、基本的には両刃の庖丁(三徳・牛刀・ペティナイフなど)にのみ対応しています。片刃の庖丁に使用してしまうと刃先が両刃に研がれてしまい取り返しが付かなくなる可能性があるので注意しましょう。

使いすぎることで側面や刃先を傷つけることにも繋がるため、可能であれば砥石で研げるようになっていただきたいというのがプロの本音です。

どうしても自分では研げないという方はご購入されたお店に相談して、定期的に庖丁の研ぎ直しをお願いすることをおすすめいたします。

Q.3 素人でも研げる?

練習すれば誰でも研げるようになります。

私たちもお客様と同じく全くの素人から始め、日々練習を重ねて研げるようになりました。

もちろんプロと同じレベルに到達するためには相当な時間がかかりますが、家庭で使うのには困らない程度に切れ味を戻すことは比較的簡単です。

庖丁を研ぐ際の注意点と基本的なコツさえ覚えてしまえば上達するのも早いでしょう。個人差はありますが、数回練習すれば大体の方はある程度上手に研げるようになるので、あまり難しく考えすぎずにまずは挑戦してみましょう。

一度身に着けてしまえば一生役に立つので覚えておいて損のない技術だと思います。

興味のある方は庖丁や砥石を購入する際に専門店のスタッフに研ぎ方を聞いてみるのがおすすめです。

Q.4 庖丁研ぎの正しい角度は?

庖丁の種類や用途によって異なります。

例えば柳刃庖丁のようにお刺身を引く庖丁と、出刃庖丁のように魚を捌いたり、骨を叩いたりする庖丁では適切な刃先の角度は異なります。

また、同じ種類の庖丁であっても刃を鋭くし一発の切れ味を求めるのか、やや丈夫に研ぎ、欠けにくく長切れする刃を求めるのかといったように様々な組み合わせが存在します。

それぞれにメリットとデメリットがあるので、特徴を理解した上で使う方がどの点を重視するのかによって角度を調節するのが良いでしょう。

誰にどう言われようと最終的には使う方が使いやすいと感じる刃付けがベストです。

Q.5 研ぎ直しの頻度は?

庖丁の種類や使用頻度、まな板の種類などによって大きく左右されるため明確な答えはありません。

目安としては使用していて切りにくく感じたら研ぎ直しをするタイミングです。

切れ味に対しての感覚は人それぞれ異なり、敏感な人は研ぐ頻度が多い傾向にありますし、人によっては5年研がなくても問題なく切れると言う方もいます。

研ぎの技量を除き、切れ味を長持ちさせるコツとしてはまな板に強く当てすぎないことがまず一つ挙げられます。

食材を切る際に”カンカンカン”と大きな音が立つ場合は切れ味既に落ちていて余計な力が入っているか、単に力を入れすぎているかのどちらかになるので前者の場合は研ぎ直しを、後者の場合は庖丁の重さとストロークを活かして優しく食材を切るように心がけましょう。

もう一つは木製のまな板を使用することです。

プラスチックや金属製の硬いまな板を使用することで切れ味が落ちるのが非常に早くなります。食材を切って刃が潰れるというよりかは硬いまな板に何度も強く打ち付けられることで刃先が潰れ、切れ味が落ちていきます。

木製のまな板はプラスチック製のものに比べて清潔に保つのに手間がかかりますが、切れ味の持続性は大幅に改善される可能性があるので、切れ味が長持ちしないとお困りの方は是非試してみてください。

Q.6-10

Q.6 幾ら研いでも切れるようにならないのはなぜ?

原因として刃先が砥石に上手く当たっていないことが多いです。

単純なことで、庖丁の刃先が砥石に当たっていなければ刃先部分は研げていないことになるので、どれだけ時間をかけても切れるようにはなりません。

まずは砥石が平であるか確認し、平らであれば次は庖丁を砥石に当てる角度が適切であるかを確認しましょう。

側面に傷が入っている場合は寝かし過ぎの可能性があるので、庖丁をやや起こして研いでみましょう。

反対に側面に全く傷が入っておらず、刃先一ミリほどしか研げていない場合は角度を立てすぎている可能性があるので、やや寝かして研いでみましょう。

初心者の方は角度の目安をコイン一枚分とするとわかりやすいでしょう。(両刃の場合)

そもそも庖丁を持つ手が不安定で狙った部分を上手く研げていないということも考えられますので、庖丁の刃を抑える指と柄を持つ手の力加減を意識してまずはゆっくりと研いでみましょう。

Q.7 両刃と片刃では研ぎ方が違う?

はい、異なります。

片刃は表裏が存在するので、表面(右利きの場合は柄から見て右側)を中心に研ぎ、裏側は極力研がないようにカエリを落として仕上げるが基本の研ぎ方となります。

この場合は表面のみ角度をつけ、裏面は基本砥石にベタ当てして研ぎます。

両刃は完全に左右対称なものと、刃先のみ両刃で中腹にかけて右もしくは左寄りに仕上げてある庖丁の2種類が存在します。

前者は3枚合わせの庖丁に多く見られ、左右を1:1に研ぐのが基本となります。極端に片方のみを研いでしまうと、どこかのタイミングで両側の軟鉄部分が刃先に来てしまい、刃が付かなくなってしまうので注意が必要です。

後者は全鋼の庖丁に多く、基本的には左右同じ角度で研ぎますが、右利き用の場合は右側を中心に研ぎ、左側はやや回数を少なめに研ぎます。

全鋼であるため刃付けの自由度は高いですが、右利き用、または左利き用と表記がある庖丁の場合はできる限り元の形に合わせて研ぐのが良いでしょう。

Q.8 研ぎをする上で1番大切なことは?

砥石の面が平らなことです。

砥石の面が凹んでいると狙った角度で研ぐことが非常に難しくなる上、余計な部分まで削ってしまう可能性があるため、庖丁の形を崩す原因になります。

片刃の庖丁を研ぐ場合は特に注意が必要で、裏押しに関しては凹んでいる砥石を一度でも使ってしまうと取り返しがつかなくなる場合があります。

研ぎを始める前に必ず砥石が平であるかを確認しましょう。

凹んでいるようであれば面直し砥石で高い部分を重点的に削り、平面にしてから使用しましょう。

写真のようにあまりにも大きく凹んでいる場合は新しい砥石に交換することをお勧めします。

僕も普段庖丁の研ぎ直しをしていますが、使用前と使用後には必ず面直しをするように習慣づけています。コツは研いだ分よりも多く削るイメージで、表面を慣らすことです。

砥石の種類や研ぐ時間によっては使用時にも時々面直しをし、常時平面を保つように意識しましょう。

中々刃がつかないと感じる方や、庖丁の形が明らかに変形しているという方は一度お待ちの砥石を確認して見ることをおすすめします。

Q.9 研ぎを勉強するのにおすすめの本は?

【初心者向け】包丁と砥石

包丁と砥石 (柴田ブックス)

価格:1980円(単行本)
※価格は公開時点での価格であり、変更されている可能性がございます。

庖丁に関する専門知識全般を扱っており、初心者の方でも分かりやすいように説明されています。

僕が和食をやっていた頃に料理長からいただいた本で、当時はこの本を参考に庖丁の扱い方や研ぎ方を勉強していました。

専門家監修の元、各庖丁の用途や特徴・製作工程から、砥石の種類や研ぎ方まで非常に勉強になる内容ばかりです。

特に料理人や研ぎ師を目指している方に是非おすすめしたい一冊です。

【中~上級者向け】実践 料理の味から追求した包丁研ぎの技法: 月山義高流 研ぎの理論とテクニック

実践 料理の味から追求した包丁研ぎの技法: 月山義高流 研ぎの理論とテクニック

監修:月山義高刃物店
価格:3850円(単行本)/ 3658円(電子書籍) 
※価格は公開時点での価格であり、変更されている可能性がございます。

2022年3月に出版された比較的新しい書籍です。

庖丁や砥石の種類、基本的な研ぎ方などの基礎知識も紹介されておりますが、一歩踏み込んだ専門的な技術も非常に詳しく解説がされており、一般の方のみならず庖丁専門店で働くスタッフにも読んでいただきたい一冊です。

Q.10 研ぎと刃付けは違う?

一般的には、「研ぎ」は既に完成した庖丁を砥石で研ぐことを指す場合が多く、「刃付け」は庖丁の生地から専門の研磨機を使用して、職人さんが製品を仕上げる工程を指す場合が多いです。

したがって、庖丁専門店でよく見る研ぎ師とは基本的に庖丁の研ぎ直しを専門に扱うスタッフのことで庖丁の作り手とは異なります。

明確な区分があるわけではないので、あくまで傾向として覚えてください。